この本とは小学生のとき、クリスマスに母から贈られたとき出会いました。その時は歳が近いローラに自分を重ね読んでいたと思います。
自分の人生がまるでローラの生きていた時代と違うなんて気づいていたのかどうか。
大きくなって、妊娠を機に、ごちゃごちゃとなんか詰め込んであるような本が苦手になり、そして懐かしさからまたこのシリーズを手に取るようになりました。
ローラと一家の世界はアメリカの、そしてまだ人の手がつけられてないような大自然が舞台です。
3作目、4作目と巻を重ねるにつれて街も出てきて多くの人とも交流を持つようになりますが、初期は場所は違えどほとんど人がいないようなところに住んでいます。
でも決して人嫌いというわけでなく、お父さんやお母さんの兄弟や親とも行き来があるし、隣人(というにはものすごく距離がありますが)とも親しく、そして支えあうように付き合っています。
この物語のすごいところはとにかく描写が細かいところ。まったくいまの時代と違う様子が浮き彫りになってきます。
そして目の前にまるでその光景が拡がるような気分にさえなります。第二巻は大草原が舞台なのですが、そこに自分もいて、風を感じ、鳥のさえずりや草が風に揺られるざわめき、動物たちの息遣いなどが伝わってくるようです。
大自然の中でローラ達一家は生活をしているので、すべてのことを自分たちでやらなければなりません。
顔を洗うのももちろん蛇口をひねれば水がでてくるわけでなく、井戸を掘るまでは川に水を汲みに行かなければなりません。
食事だってそう。お父さんが獲物を捕ってきて、野菜も自分たちで作るのが当たりまえ。そもそも家や家具でさえ材木を切り出して自分たちの手で完成させるのですから。
ローラも、お姉ちゃんであるメアリィもお手伝いします。ずっと遊んでいる訳にはいかないのです。
洋服だってそれぞれ2,3枚あるくらい。時にはやはりこうしたい、こうであったらいいのにと思うこともありますがそれでもワガママをずっと言ったりしません。
幼いなりにガマンを知っているんですよね。
読んでいて思うのはこの世界の完璧なまでの幸福感。大自然相手だから時にものすごい困難にも直面しますし、苦労もあるし。
毎日やらなければならないことばかりで、娯楽だって食事だって今の時代に比べて少な
いはずですが、笑い声が絶えず、生きていることに感謝し、皆と生活できることに満足しているところ。
今の時代は、何のために自分は生きていくのか、生きていく理由が欲しいと迷う人もいますが、生きることが当たり前でなかった時代には生きることに問いなんて必要なかったのですよね。
生きられることが幸せなのだから。
いくらローラの世界が幸せそうに見えても、もうそんな生活はなかなかできませんが。だからこそこの物語がより輝いて感じるのかもしれません。
長い間多くの人に愛されているのもうなずけます。
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